夏休みの図書館に漂う、青春の匂い
図書館は、夏の間大忙し。読書感想文を書くために、受験勉強をするために、夏期講習の宿題をするために。たくさんの子どもたちが足を運ぶからだ。
…と、図書館で働く母から聞いた。
真夏の図書館は、なんだかそわそわする。じっとしてることが上手にできない子どもたちが、それでも懸命に机にかじりついて学ぼうとしている。楽しそうなひそひそ声が聞こえてくる。
夏休み中の、だぁれもいない学校とか、野球部の練習試合とか、嫌に冷房が強くかかった職員室とか、そういうものを思い出す。
せいしゅん、なんてものは幻想に過ぎなくても、その一瞬一瞬が記憶の底にあるだけで、胸がこんなにもきゅんとする。
今思うと、感情が荒削りで、まるで箱庭の中にいるかのような10代のひとときは、やっぱり何にも変えがたいものだと感じる。そう思えるくらい、平和な日々を過ごせたことを幸福に感じる。
戻りたくはない。でも、ずっと大切にしたい。誰にも取られたくない。そんな宝物を、誰もがきっと持っているんだろうな。
けしからん。たった一つの記憶のかけらだけで、人を殺すほど暑い夏でも、こんなに愛おしく感じられるのだ。